Exchange Online上にメールボックスを作成すると Default MRM Policy なるものが勝手に割り当てられます。
アイテム保持ポリシーと呼ばれるそうですが、どのような役割があるのでしょうか?まえから疑問に思っていたので調べてみました。
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Default MRM Policyの正体
Default MRM Policyは、アイテム保持ポリシーになります。
アイテム保持ポリシーは、日々増加するデータのサイズを効果的に管理するためのもの。
ここでいう「効果的に管理する」とは、アイテムを自動的に削除したり、アーカイブへ移動してくれることを指します。
Default MRM Policyは、その名前からもわかるように、メールボックスを新規作成すると、勝手に(自動で)割り当てられるDefaultのポリシー。もし嫌だったら、後から別のポリシーを割り当てたり、外してしまうという選択肢も選べます。
ちなみに、MRMとは「メッセージングレコード管理(Messaging Records Management)」の略です。
保持ポリシーの中保持タグが存在する?
保持ポリシーには保持タグと呼ばれるものが含まれます。
イメージとしては、ポリシーは保持タグを入れておくためのただの器と思ってもよいかもしれません。
保持ポリシー自体に具体的な保持手段(保持期間や保持手段など)は記述しておらず、これらの情報はすべて保持タグが持ちます。
この保持タグには様々な種類があり、自分であたらに作る(定義する)ことも可能です。
アイテムやフォルダ単位に保持手段が定義されたタグをつけることで容量などを効率的に管理します。
保持タグには様々な種類がありますので、ご紹介します。
保持タグの種類と役割
既定(DPT)タグ
メールボックス全体に自動的に適用するタグになります。
- Default 2 year move to archive:730日経過したアイテムはアーカイブに移動されます。
※アーカイブへ移動する動作については、インプレースアーカイブが有効の場合にのみ動作
アイテム保持ポリシー(RPT)タグ
既定(決められた)のフォルダに自動的に適用するタグになります。
- Junk Email(迷惑メールフォルダ―に自動適用):30日経過したアイテムは削除して回復を許可します
- Recoverable Items 14 days move to archive(回復可能なアイテムフォルダ―に自動適用):14日経過したアイテムはアーカイブに移動します。
個人タグ
既定ではこのタグは適用されません。
このタグを利用する場合は、利用するユーザが手動で対象のフォルダに対して設定する必要があります。
対象のフォルダとは、既定のフォルダ以外を指します(自分で後から作成したフォルダのこと)
- 1 Month Delete:30日経過したアイテムは削除して回復を許可します。
- 1 Week Delete:7日経過したアイテムは削除して回復を許可します。
- 1 Year Delete:365日経過したアイテムは削除して回復を許可します。
- 5 Year Delete:1825日経過したアイテムは削除して回復を許可します。
- 6 Month Delete:180日経過したアイテムは削除して回復を許可します。
- Never Delete:無期限に保持(削除されない)
- Personal 1 year move to archive:365日経過したアイテムはアーカイブに移動する。
- Personal 5 year move to archive:1825日経過したアイテムはアーカイブに移動する。
- Personal never move to archive:無期限に保持(アーカイブへ移動されない)
個人タグをフォルダに設定する方法
Outlook on the webの場合
- 適用するフォルダーまたは個別アイテムを右クリックし、[ポリシーの割り当て] をクリックします。
- 表示されたポリシーより、設定する個人タグを選択します。
※後述する管理フォルダーアシスタントを実行します
※設定内容が反映されるまでに時間がかかる場合があります
Outlook クライアントの場合
- 適用するフォルダーまたは個別アイテムを右クリックし、[プロパティ] をクリックします。
- [ポリシー] タブをクリックし [フォルダーのポリシー] のプルダウンより、設定する個人タグを選択し [OK] をクリックします。
※後述する管理フォルダーアシスタントを実行します
※設定内容が反映されるまでに時間がかかる場合があります
※Outlook クライアントには、この機能を使える製品とそうでないものがあります。
例えば、パッケージ版のOffice Personalなどは、個人タグの割り当てやインプレースアーカイブの表示ができません。
個人タグの作成手順
保持期間経過後にアイテムを削除する、新しい保持タグ(個人タグ)を作成します。
管理者にて、Office 365 Admin center へサインインを行い、 Exchange 管理センターに移動します。
- [コンプライアンス管理] - [保持タグ] の順にクリックします。
- [タグの新規作成(+マーク)] - [ユーザー別にアイテムとフォルダーに適用する(個人)] をクリックします。
- 以下の内容で設定を行います。(例として保持期間が 3ヶ月を経過したアイテムを削除する設定)
・名前 : 任意に入力ください(例: 3 Month Delete)
・保持アクション : 運用に合わせて選択します。
- [削除して回復を許可する] : 該当フォルダーより削除が行われ、回復可能領域に一定期間(既定では 14 日間) 保管が行われます。
- [完全に削除する] : 該当フォルダーより削除が行われ、回復可能領域に移動せずに完全削除が行われます。
・保持期間 : アイテムの保管日数が次の期間(単位:日)に達したとき : 90 - [保存] をクリックします。
※同様の手順で必要な保持タグを作成します
個人タグのアイテム保持ポリシーへの追加方法
アイテム保持ポリシー [Default MRM Policy] に作成した [保持タグ] を追加します
- 管理者にて Exchange 管理センターへアクセスします
- Exchange 管理センターより、[コンプライアンス管理] - [アイテム保持ポリシー] の順にクリックします
- [Default MRM Policy] をダブルクリックします
- [+](追加) をクリックしますと、保持タグの選択画面に切り替わります。
- 項番 1 で作成した [保持タグ](例: 3 Month Delete)を選択し、[追加->] をクリックします(複数の選択も可能です)
- [保存] をクリックします
管理フォルダーアシスタントについて
管理フォルダーアシスタントは、ワークサイクル (7 日) に 1 度動作し、アイテム保持ポリシーによる保持タグの適用、アイテムの移動や削除が行われます。
[保持タグ] を追加した場合につきましても、管理フォルダーアシスタントが動作したタイミングで設定内容に沿って処理が行われます。
また、[管理フォルダーアシスタント] の自動動作の対象となるためには、現在のメールボックスの使用容量が 10 MBを超えたメールボックスが対象となります。
なお、管理フォルダーアシスタントの動作履歴を確認する機能は、現在備わっておりません
※補足事項
Windows Powershell コマンドレットの動作環境を構築済の場合、以下のコマンドレットにて管理フォルダーアシスタントを実行することができますので、手動で設定内容を反映させることが可能。
この場合、メールボックスの使用容量が 10 MB未満でも処理の対象になります。
管理フォルダーアシスタントを即時動作させる
メールボックス単位で管理フォルダーアシスタントを走査させるコマンド
[構文]
Start-ManagedFolderAssistant -Identity <対象のメールアドレス>
[実行例]
Start-ManagedFolderAssistant -Identity User001@contoso.com
全メールボックスに対し、管理フォルダーアシスタントを走査させるコマンド
下記の 2 つのコマンドを順番に実行してください。
[実行コマンド 1]
$Temp=Get-Mailbox -ResultSize Unlimited -RecipientTypeDetails UserMailbox
[実行コマンド 2]
$Temp|foreach {Start-ManagedFolderAssistant $_.PrimarySmtpAddress}
※ 反映まで時間がかかる場合があります。
※ 一度のコマンドレットの実行ではアイテムが処理されない場合があります。その際は数回コマンドレットを実行してください。